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企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリットとデメリット

労務コラム 確定拠出年金
企業が優秀な人材を確保するためには、福利厚生を充実させることが不可欠です。
従業員の老後にそなえる年金制度として、企業型確定拠出年金(企業型DC)が注目されています。
今回は、企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリットやデメリットについて解説します。

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企業型確定拠出年金(企業型DC)とは

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは、事業主が掛金を拠出し従業員が運用する企業年金です。
確定拠出年金は、あらかじめ確定している拠出(掛金)額とその運用損益の合計額により事後的に給付額が決定されるしくみで、「企業型(企業型DC)」と「個人型(iDeCo)」の2種類があります。
確定拠出年金は「Defined Contribution」の頭文字を取って「DC」と呼ばれており、米国の確定拠出型個人年金制度である「401K」を源流としていることから、「日本版401K」と言われることもあります。

iDeCo+(イデコプラス)との違い

iDeCo+(イデコプラス)とは、従業員が個人で加入しているiDeCoに、事業主が上乗せして掛金を拠出できる制度です。
企業型DCとの違いは、主体となっているのが事業主と従業員のどちらかという点です。
企業型DCは事業主がすべての掛金や事務手数料などを負担しますが、イデコプラスの主体は従業員にあり、事業主の役割は掛金を上乗せすることのみに留まります。

その他の企業年金

その他の企業年金には、「厚生年金基金」と「確定給付企業年金(DB)」があります。
厚生年金基金は新設が認められておらず、近年は解散が相次いでいます。
確定給付企業年金(DB)は国内で最も普及している企業年金制度で、「Defined Benefit」の頭文字を取って「DB」と呼ばれています。
事業主が掛金の拠出・運用・管理・給付までの責任を負い、原則将来の給付額が確定していることが特徴です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)制度の概要

企業型確定拠出年金(企業型DC)では、従業員が金融商品の選択などの運用をおこない、原則60歳以降に年金資産を受け取ることができます。
事業主が拠出する掛金の上限額は、以下のとおり定められています。

  • ・他の企業年金がある場合:月額27,500円
  • ・他の企業年金がない場合:月額55,000円

基本的には事業主のみが掛金を拠出しますが、以下の制度を導入することで従業員が掛金を上乗せすることもできます。

マッチング拠出

マッチング拠出とは、企業型DCにおいて、従業員が掛金を上乗せできる制度です。
掛金については、以下の要件を満たす必要があります。

  • 従業員拠出の掛金の金額が企業拠出の掛金を超えないこと
  • 企業拠出と従業員拠出の掛金の合計額が拠出限度額を超えないこと

選択制DC

選択制DCとは、従業員が給与の一部を企業型DCの掛金として拠出するか、給与として受け取るか、選択できる制度です。
加入する場合は給与の一部を掛金とすることにより、社会保険料等の軽減効果が期待できます。
従業員が拠出する掛金は、企業拠出との合計額が拠出限度額を超えない範囲で自由に決められます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリットとデメリット

企業型確定拠出年金(企業型DC)には従業員と事業主のそれぞれにメリットがあります。一方で、デメリットにも留意する必要があります。それぞれ見ていきましょう。

従業員のメリット

まずメリットには、多数の税制優遇措置があげられます。
事業主が拠出する掛金は従業員の所得とみなされないので、全額非課税です。また、マッチング拠出を利用する場合は、従業員の積み立てる掛金は所得控除の対象となります。
さらに、運用益についても企業型DCの場合は非課税ですので、一般的な投資よりもお得に運用することができます。
受け取り方法は「一時金(一括)」、「年金(分割)」、「併用」の三種類から選択できます。一時金形式の場合は退職所得控除が利用でき、年金形式の場合には公的年金等控除が利用できます。

従業員のデメリット

確定拠出年金は将来の給付額が運用結果に左右されるため、受け取り額が確定していません。元本確保型でない運用商品を選択した場合は、元本割れ等の資産運用リスクを負います。
また、一定の要件を満たさない限り、脱退や途中での解約ができません。引き出し可能時期が60歳以降のため、無理のない範囲で積み立てる必要があります。
企業型DCでは運営管理機関を選ぶのは事業主であるため、従業員のニーズにマッチする運用商品がない可能性もあるでしょう。

事業主のメリット

事業主のメリットは、掛金を全額損金算入でき、社会保険料が削減できる点です。
さらに退職金の費用を平準化することができ、企業年金の積立不足が発生しません。
また、福利厚生を充実させることは、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

事業主のデメリット

掛金の拠出や運営管理手数料等の費用、加入者の入退社管理や掛金額変更等の事務は、すべて事業主が負担します。

iDeCoと企業型DCの併用について企業の規約が不要に【2022年10月】

個人型確定拠出年金であるiDeCo(イデコ)と企業型DCは、条件を満たせば併用することができます。
2022年10月からは企業の規約が不要とされ、より併用しやすくなります。
掛金については、以下のような特徴があります。

  • ・従業員拠出の掛金の上限は月額20,000円
  • ・従業員拠出の掛金の金額が企業拠出の掛金の金額を超えてもかまわない
  • ・企業拠出の掛金と従業員拠出の掛金の合計額が掛金の拠出限度額を超えない

※ただし、マッチング拠出を選択している場合や掛金が毎月定額拠出になっていない場合など、加入できないケースもあり

まとめ

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、税制の優遇という強力なメリットを持った制度です。
その一方で、運用を従業員に任せることから元本割れのリスクなどのデメリットも存在します。
制度についての正しい知識を事業主と従業員が共有し、福利厚生の充実を図っていきましょう。

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