GLOSSARY社労士用語集

労使協定(ろうしきょうてい)

POINT

労使協定は、労働者と使用者が合意した労働条件などを書面契約したもので、労働基準法の最低基準を補完または詳細化します。

1. 「労使協定」の定義と意義

労使協定は、労働者(労働組合)と雇用者(企業や雇用主)の間で合意される労働条件や労働関係に関する合意書のことを指します。労働基準法や労働契約法などの法律の範囲内で、労働者と雇用者が具体的な事項について合意することで、労働条件を個別に定めることができます。

労使協定は、労働者が集団で労働条件や労働環境の改善を求めるために結成した労働組合と雇用者との間で締結されることが一般的です。労働組合は、労働者の利益を代表し、労働条件の向上や労働者の権利保護を目指すために交渉を行います。

労使協定の内容は多岐にわたりますが、労働時間や賃金、休暇制度、労働条件の改善、労働災害予防、労働者の教育訓練などが含まれることがあります。また、労働組合の活動や労使関係の円滑化に関する事項も含まれることがあります。

労使協定は、労働者と雇用者が合意したものであるため、当事者間の信頼関係や協力関係を築くことが重要です。労使協定は労働条件の確定と安定化に寄与し、労働者の権利や福利厚生の向上に役立つことが期待されています。

2. 労働基準法との関連

労働基準法は、労働者の権利と福利を保護するために制定された法律で、最低限の労働条件や安全基準を定めています。

労使協定は、労働基準法の下での最低基準(最低賃金、最大労働時間、休日、有給休暇など)を満たしつつ、労働者と雇用者が合意した特定の条件や改善点に焦点を当てます。労使協定では、より具体的で詳細な労働条件を合意することができますが、労働基準法で保護されている最低ラインを下回ることはできません。言い換えれば、労働基準法の下で定められた最低基準を超える労働条件の改善や追加を可能にします。労働基準法が定める基準に達している場合でも、労使協定によって労働者の福利厚生の向上や労働条件の改善を図ることができます。

労使協定は、法律の要求を満たしながら、より具体的な労働者のニーズに応える柔軟性を提供します。

3. 「労使協定」の内容

労使協定の具体的な内容は職場によって大きく異なります。一般的には、労働時間、休憩時間、休日、残業代、賃金などが対象になります。

労使協定の内容は多岐にわたります。例えば、労働時間に関しては、週40時間を超える場合の時間外労働手当や休日出勤の割増賃金、シフト制の導入や勤務時間の柔軟化などが合意されることがあります。賃金面では、最低賃金額を上回る基準の設定や昇給・賞与の基準、給与改定のタイミングや方法について合意されることがあります。福利厚生面では、有給休暇の取得条件や時間、社内保育施設の設置や労働者の家族への医療保険の適用範囲などが含まれる場合があります。さらに、労働条件改善のための措置として、労働環境の改善や労働災害予防対策、労働者の教育・訓練プログラムの実施、キャリア開発の支援などが合意されることもあります。これらの具体的な合意事項は、労働者と雇用者のニーズや業界の特性によって異なる場合があります。

労使協定は、法的な基準を超えて労働者の福祉や労働環境の向上を図るための重要な手段となります。

4. 労使協定の重要性

労使協定は、職場の特性を反映した労働条件を設定することができます。これにより、職場の生産性を向上させたり、労働者の働きやすさを高めることが期待できます。労使協定はまた、労働者と使用者が共同で労働条件を決定することで、相互理解と尊重を深め、職場におけるコミュニケーションを促進します。さらに、両者が協力して問題を解決する文化を形成し、職場の和解と安定を促進します。これは、職場のパフォーマンスと働きやすさを向上させるための重要な要素となります。

5. 労使協定の注意点

労使協定には一定の制約があります。労働基準法が定める最低基準を下回る内容を取り決めることは法的に認められていません。これは、労働者の基本的な権利と福利を保護するという労働基準法の基本的な目的に反するからです。

また、労使協定は文書により明示する必要があり、それを労働者全員に周知する義務があります。

また、裁量労働制や変形労働時間制、時間外労働(いわゆる36協定)など、特定の内容の労使協定を締結した際は、労働基準監督署に届け出る必要があります。

6. まとめ

労使協定は、職場の特性を反映した労働条件の設定や問題解決の手段として非常に重要です。それは労働基準法の範囲を超えて詳細な取り決めを可能にし、職場環境の改善に大きく貢献します。しかしながら、法的な制約も存在します。協定は労働基準法が定める最低基準を下回ることは許されず、全ての労働者に周知する義務があります。

このため、労使協定の作成や運用は法的な知識を基に慎重に行う必要があります。したがって、労使協定を適切に活用することで、職場環境の改善と労働者の福利を促進するとともに、経営者と労働者の間の理解を深めることが可能となります。これにより、経営者はより生産性の高い職場を作り出すことができ、労働者はより良い労働環境で働くことができます。

労使協定は職場における様々な課題を解決する有効なツールとなり得ます。しかし、その実施にあたっては法的な制約と要件を十分に理解し、遵守することが必須となります。そのため、法律の知識を持つ専門家の助けを借りることも、労使協定を正しく、効果的に運用するための重要なステップとなるでしょう。

最後に、労使協定は職場の特性を反映した取り決めであるため、定期的に見直しを行うことも重要です。職場環境や業務内容、労働者のニーズなどは時間とともに変化します。そのため、労使協定もそれらの変化に応じて適宜更新することが求められます。これにより、労使協定は常に職場の現状に適したものとなり、労働者と経営者双方にとって最善の結果を生み出すことが可能となります。

7. 参考URL

マネーフォワード クラウド給与 労使協定とは?種類や届出義務および違反した場合を解説(外部リンク)

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