65歳以上の雇用保険と給付金!2022年度から労働時間の合算も可能に
投稿日:2022年7月1日
さらに2022年度からは、複数事業主に雇用されている場合でも、労働時間を合算して条件を満たせば雇用保険に加入できるようになります。
今回は、65歳以上の労働者に適用される雇用保険制度について解説します。
65歳以上の雇用保険の加入条件
2017年の法改正により、65歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となりました。
65歳以上の労働者が雇用保険に加入するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 31日以上の雇用継続が見込まれている
事業主は、要件を満たす労働者が入社した翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークへ提出します。
途中で労働条件の変更があり、適用要件に該当することになった場合は、契約が変更となった月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。
加入要件を満たしているにもかかわらず、労働者を雇用保険に加入させていないことが発覚した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。
手続きに必要な書類
雇用保険の申請手続きには「雇用保険被保険者資格取得届」が必要です。書類に記載するために、事業主は労働者から以下の情報を知らせてもらいましょう。
- 個人番号(マイナンバー)
- 前職の雇用保険被保険者番号(過去に加入している場合)
届出の様式は管轄のハローワークで配布しているほか、厚生労働省のホームページからダウンロード、または電子申請することができます。
【参考】厚生労働省 「電子申請(申請・届出等の手続案内)」(外部サイト)
複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者【2022年4月より開始】
2022年4月に「マルチジョブホルダー制度」が新設されました。これは複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、勤務時間等を合計して要件を満たす場合、雇用保険への加入が認められるというものです。
この特例適用は、労働者の申し出があってはじめて成立します。自動的に適用されるものではありません。
マルチジョブホルダー制度の適用要件は、以下のとおりです。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者である
- 複数の事業所(1つの事業所における週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、週の所定労働時間が20時間以上である
- 複数の事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上である
事業主は、対象となる労働者からの加入申し出を正当な理由なしに拒むことはできません。
65歳以上の労働者のための「高年齢求職者給付金」
65歳以上の雇用保険加入者は、失業した際に「高年齢求職者給付金」を受給することができます。
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の労働者を対象とした失業手当です。受給要件を満たせば何度でも受け取ることができ、年金とも併給できます。
高年齢求職者給付金を受けとるための条件
高年齢求職給付金を受けとるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 離職の日以前1年間で雇用保険に加入していた期間(賃金支払基礎日数11日以上の月)が合計6ヶ月以上である
- 就職する意思があり、求職活動を行っている
- 就職ができる能力と環境があるにもかかわらず失業状態にある
高齢者求職者給付金の支給金額は、雇用保険の加入期間によって異なります。加入期間が6カ月以上1年未満の場合は基本手当日額の30日分、1年以上の場合は50日分です。基本手当日額は給与の5割~8割程度になることが一般的で、賃金日額に給付率を乗じて算出します。
高年齢求職者給付金の手続き方法
事業主は、対象の労働者が退職する際に離職票を発行します。高年齢求職者給付金の手続きは、失業者本人がおこないます。
失業した高年齢被保険者は、所管するハローワークに求職登録用紙と以下の書類を提出します。
- ・離職票-1
- ・離職票-2
- ・印鑑(シャチハタ不可)
- ・本人の写真
- ・普通預金通帳またはキャッシュカード
- ・マイナンバーカード
マイナンバーカードがない場合は、個人番号確認書類(通知カード、個人番号が記載された住民票など)と身元確認書類(運転免許証、公的医療保険の保険証など)を合わせることで代用できます。
高年齢求職者給付金の注意点
高年齢求職者給付金の手続きには、以下のような注意点があります。
手続きをおこなう時期
高年齢求職者給付金の支給を受けられる期限は離職日の翌日から1年間です。手続きは余裕をもって早めにおこないましょう。
手続きから実際に受給できるまで
高年齢求職者給付金は、手続き後最短でも7日間経過しないと支給されません。これを待期といいます。
自己都合で退職した場合は待期が経過した後さらに2か月、また自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合などは3か月経過するまで支給されません。
まとめ
事業主には、要件を満たす65歳以上の労働者を雇用保険へ加入させる義務があります。
そして高年齢求職者給付金の手続き、マルチジョブホルダー制度活用の申し出については、労働者自身がおこなう必要があります。
事業主と労働者の双方が制度を理解し活用することは、よりよい労働環境の構築につながっていくでしょう。
服部社会保険労務士事務所では、上記のような手続きをサポートするサービスをご用意しています。
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