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算定基礎届とは?注意点や標準報酬月額について解説

健康・厚生年金保険 労務コラム 算定基礎届
事業主は、年に一回「算定基礎届」と呼ばれる書類を日本年金機構へ提出しなければなりません。
これは従業員の給料と社会保険料に大きな差が生じないよう、見直しをするための手続きです。
今回は、社会保険の「算定基礎届」について詳しく解説します。

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算定基礎届とは

算定基礎届とは、企業が日本年金機構へ提出する書類のひとつで、正式名称を「被保険者報酬月額算定基礎届」といいます。
健康保険などの社会保険料は、標準報酬月額により算出され、従業員の給与から天引きで徴収されています。標準報酬月額は、給料や手当などの報酬を一定の幅で区分したものです。この額を年に一度見直すことを「定時決定」といいます。
算定基礎届は、標準報酬月額を定時決定する際に使用されます。

算定基礎届の対象者

算定基礎届の提出が求められるのは、7月1日の時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者となっている従業員です。
休職中や育児休業を取得している人も含まれます。また、70歳以上の健康保険被保険者は、厚生年金の被保険者ではありませんが、算定基礎届の対象になります。

算定基礎届の対象にならないのは、以下に該当する従業員です。

  • 6月30日までに退職した従業員
  • 6月1日以降に被保険者となった従業員
  • 7月改定の月額変更届(※)を提出する従業員

※4〜6月に支払われた平均給与と、現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある場合は、月額変更届を提出する

パートやアルバイトを掛け持ちしている従業員は、社会保険の加入条件を満たす場合、それぞれの企業で資格取得手続きをおこないます。
算定基礎届は、メインとなる企業として届け出た「選択事業所」を管轄する年金事務所から各企業に送付されます。

標準月額報酬の算出方法

標準報酬月額の計算は、以下の手順でおこないます。

  • (1)4月~6月に支払った報酬(給与・賞与等)を確認する
  • (2)各月の支払基礎日数を調べる
  • (3)3か月分の報酬の平均額を計算する
  • (4)(3)で計算した平均額を、自社を管轄する都道府県の保険料額表から探す
  • (5)(4)が該当する「標準報酬」欄の「等級」と「月額」をチェックする

支払基礎日数とは、その報酬の支払い対象となった日数のことです。算定基礎届で届出する報酬月額は、支払基礎日数が17日以上あるものに限られます。

支払基礎日数の数え方は、働き方によって以下のように変化します。

月給制や週休制の労働者

正社員などの月給制や週休制で働く労働者は、出勤日数に関係なく暦日数が支払基礎日数となります。欠勤した日数分だけ給料が差し引かれるという場合には、事業所が定めた日数から欠勤日数を控除した日数でカウントします。

短時間労働者

パートやアルバイトなどの短時間労働者は、実際の出勤日数が支払基礎日数となります。4月〜6月の間で17日以上の支払基礎日数がある月の平均で算出します。3カ月とも17日未満の場合は、15〜16日出勤した月を対象とし、その要件も満たさなければ、従前の標準報酬月額で定時決定します。

例外として、短時間労働者が特定適用事業所に勤めている場合には、4月〜6月の3カ月の支払基礎日数がそれぞれ11日以上で算出します。

算定基礎届の注意点

算定基礎届を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

4月〜6月が繁忙期の場合

標準報酬月額は、通常4月〜6月の報酬額から計算されます。しかし、この期間に繁忙期が重なる企業では、残業手当が支給され一時的に報酬額が高くなる可能性があります。
こうした場合には、「4月~6月の給与の平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額」を比較します。保険料額表で2等級以上の差があり、それが例年発生することが見込まれる場合には、前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した金額で標準報酬月額を決定できるようになります。この適用を受けるためには、「事業主の申立書」と「被保険者の同意」の提出が必要です。

休業手当が支給された場合

4月~6月の間に休業手当を支給した場合には、7月1日時点で休業が解消されているかどうかによって取扱いが異なります。

7月1日時点で休業が解消されている

休業手当を含まない月のみを対象として計算します。4月〜6月すべての月で休業手当が支払われている場合には、従前の標準報酬月額で決定することになります。

7月1日時点で休業が解消されていない

休業手当を含む月と、通常の給与の月を含めて平均額を算出します。これによって標準報酬月額が2等級以上変動する場合は、月額変更届(随時改定)を提出します。
また、休業が解消されたのち標準報酬月額が2等級以上変更になる場合にも、月額変更届(随時改定)が必要です。

算定基礎届の提出期限、提出方法

提出期限

算定基礎届は、原則としてその年の7月1日〜7月10日までに提出します。
協会けんぽに加入している場合は、管轄の年金事務所に提出します。健康組合に加入している場合は、健康保険分を健康保険組合へ、厚生年金部分を年金事務所へ提出します。
※健康保険組合によっては提出期限が上記と異なる場合あり

算定基礎届の用紙は、毎年6月前後に対象の企業へ届けられます。

提出方法

提出方法は、以下の4つから選択できます。

  • 送付された算定基礎届に同封されている返信用封筒で管轄の年金事務所へ郵送
  • 管轄の年金事務所窓口に持参
  • 電子媒体(CD・DVD)に記録して郵送
  • 電子申請

電子媒体申請のフォーマットや、電子申請のための総合窓口「e-Gov」については、日本年金機構のホームページをご覧ください。

まとめ

算定基礎届の作業をおこなう6、7月は、人事労務に関する手続きが目白押しの時期です。滞りなく進められるよう、前もって準備をしておきましょう。

また、2020年4月からは特定の大法人に対して、一部の社会保険・労働保険に関する手続きの電子申請が義務化されました。事業主は、こういった時代の変化に合わせて適切な処理ができるよう備える必要があります。

服部社会保険労務士事務所では、上記のような手続きをサポートするサービスをご用意しています。担当者にかかる負担の軽減のため、ご利用されるのはいかがでしょうか。
社会保険・労働保険についてのご相談は、当事務所のお問い合わせフォームまたはLINEよりご連絡ください。

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