GLOSSARY社労士用語集

健康保険(けんこうほけん)

POINT

健康保険は、事業所の従業員やその家族が病気やケガ等で医療を必要とした際に医療費を補助し、生活保障を提供する制度です。

1. 健康保険の概要

健康保険制度は、従業員が病気や怪我により収入を失った場合に経済的な支援を提供する目的で設けられた制度です。また、健康の維持と増進を図るための医療サービスも提供しています。この制度は、健康保険法(昭和22年法律第70号)に基づいて運用されています。

健康保険法では、すべての事業所が従業員を健康保険に加入させることを義務付けています。これは、社会全体で健康保険制度を支え、従業員の生活安定と福祉の向上を図るための重要な措置です。

なお、加入の対象となる従業員は、一定の条件を満たす者に限られます。たとえば、労働時間が週20時間以上であり、かつ、1ヶ月以上雇用される見込みのある者などです。事業所は、これらの条件を満たす従業員がいれば、速やかに健康保険に加入させる義務があります。

また、事業所は健康保険の保険料を徴収し、納付する役割も担っています。保険料は、従業員の賃金に基づいて計算され、事業所と従業員で折半して負担します。これにより、給与から保険料が天引きされ、事業所がその分を保険者に納付する形となります。

これらの法的根拠と実際の運用方法について、今後の項目で詳しく解説します。

2. この記事における用語の定義

事業所

労働者を雇用する組織や個人を指します。商業、工業、農業、サービス業など、事業の形態や規模に関わらず、一定の要件を満たすすべての事業主が健康保険法の対象となります。

保険料

事業所と従業員が共同で負担する健康保険の経費です。保険料は従業員の給与額によって決定され、月額で徴収されます。事業所は従業員から天引きした保険料を保険者に納付します。

保険者

健康保険の給付を実施する機関を指します。具体的には、厚生労働大臣が指定した健康保険組合、船員保険、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学共済、医師国保などが該当します。

被保険者

健康保険の保険料を支払い、給付を受けることができる資格を有する従業員を指します。一定の要件を満たす事業所で働く従業員は、原則として被保険者となります。

扶養者

被保険者の扶養を受けている家族で、健康保険の給付を受ける資格がある者を指します。配偶者や子ども、親などが該当します。ただし、年齢や所得など一定の条件があります。

3. 健康保険法に基づく事業所の義務

健康保険法には、事業所に対して様々な義務が課せられています。その中でも特に重要なものは、従業員を健康保険に加入させることと、保険料の徴収及び納付です。

保険料の徴収と納付

事業所は、被保険者となる従業員から保険料を徴収し、保険者へ納付する義務を負っています。保険料は従業員の給与から自動的に引かれ、その分を事業所が保険者に納付します。保険料の計算方法や納付手続き等は、保険者から指示があります。

被保険者資格の管理

また、事業所は被保険者の資格を管理する義務もあります。具体的には、新たに従業員が入社した際の健康保険への加入手続き、退職時の脱退手続き、扶養家族の変更など、従業員の状況に応じた手続きを行う必要があります。

これらの手続きは、事業所が直接保険者に対して行います。そして、保険者からは健康保険証が発行され、その保険証を持つことで従業員やその扶養家族は健康保険の給付を受けることができます。

以上の義務は、健康保険法に基づき厳格に適用されます。事業所はこれらの義務を遵守し、法令遵守の下で従業員の福祉を確保する役割を担っています。

4. 健康保険の適用範囲とその例外

健康保険法は、一定の要件を満たす全ての事業所と従業員に適用されます。適用対象となる事業所と従業員について説明します。

健康保険の適用対象となる事業所と従業員

健康保険法第3条によれば、1日に働く時間が通常3時間以上であり、週に働く日数が通常4日以上の労働者を雇用する事業所が健康保険の適用対象となります。

また、同法第2条によれば、事業所で働く労働者は、1日の労働時間が通常3時間以上であり、週の労働日数が通常4日以上の場合、健康保険の被保険者となります。これは、非常勤労働者やパートタイム労働者も含まれます。

例外規定と特例

一方で、健康保険法には例外規定も設けられています。たとえば、家族で働く者(同法第4条)、1日の労働時間が2時間以下の者(同法第3条の2)、60歳以上の者(同法第2条の2)などは、原則として健康保険の適用を受けません。

しかし、これらの例外に該当する者でも、特例により健康保険の適用を受けることができます。具体的な手続きや要件については、各事業所の所轄する社会保険事務所に問い合わせることが必要です。

5. 健康保険の給付内容

健康保険制度は、被保険者及びその扶養者が病気やケガなどで治療を必要とした場合に、医療費の一部を補てんする制度です。また、疾病や傷害により仕事ができなくなった場合の生活を支えるための給付も行います。以下に主な給付内容を述べます。

医療給付

健康保険法第59条に基づき、被保険者やその扶養者が疾病、傷害、死産または出産により医療を必要とした場合に、その医療費を補てんします。具体的には、診察費、薬剤費、手術費、入院費などが対象となります。

傷病手当金

被保険者が疾病や傷害により仕事を休む必要が生じた場合、その期間に対して傷病手当金が支給されます(健康保険法第76条)。これにより、収入が途絶えた期間でも生活を維持することが可能となります。

出産手当金

出産により仕事を休む必要がある場合、その期間に対して出産手当金が支給されます(健康保険法第65条)。また、出産による医療費に対しては出産一時金が支給されます(健康保険法第66条)。

これらの給付は、社会保障としての役割を果たし、被保険者とその扶養者の生活を支えます。各種給付には一定の要件があり、適用を受けるためには事前に申請が必要です。

6. まとめ

本記事では、「健康保険」について、その法的根拠である健康保険法を基に詳述しました。具体的には、健康保険の概要、重要な用語の定義、事業所の義務、適用範囲及びその例外、そして給付内容について説明しました。

健康保険制度は、被保険者とその扶養者が病気やケガなどで医療を必要とした場合に医療費を補てんし、仕事を休む必要が生じた場合には生活を支える給付を提供します。事業所は、健康保険法に基づき、従業員の健康保険の手続きを行い、保険料を納付する義務を負います。

これらの知識と理解は、事業所が法令を遵守し、従業員の健康と生活を守るために必要不可欠です。また、従業員自身が自身の権利を理解し、適切に利用するためにも重要な情報です。

健康保険は、社会保障制度の一環として、従業員とその家族の生活を守る役割を果たします。その仕組みと法的根拠を理解することは、事業所運営における重要な一環です。

7. 参考URL

厚生労働省 医療保険

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