労務担当者必見!雇用保険の基礎知識、加入条件、手続き方法
投稿日:2022年6月15日
今回は雇用保険制度の基礎知識や加入条件、必要な書類、手続きの方法について解説します。
雇用保険とは
雇用保険とは、労働者が失業して所得がなくなった場合に、失業給付金などを支給する保険をいいます。
失業期間中に一定額の給付をすることで、生活の安定を図り、再就職活動をサポートします。
雇用保険は、労働者を雇用する企業や団体には原則として強制的に適用されます。
雇用保険の加入条件
労働者が雇用保険に加入するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- (1)勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあること
- (2)週間あたり20時間以上働いていること
- (3)学生ではないこと(例外あり)
(1)勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあること
31日間以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が該当します。
雇用契約に「更新する場合がある」旨の規定があり31日未満で雇い止めすることが明示されていないときは、この条件を満たすことになります。
また、雇用契約に更新規定がない場合でも、実際に31日以上雇用された実績があるときは、この条件が適用されます。
(2)1週間あたり20時間以上働いていること
「所定労働時間」が週20時間以上ということを意味します。
一時的に週20時間以上働いたことがあっても、契約上の所定労働時間が週20時間未満となっている場合は、この条件を満たしません。
(3)学生ではないこと(例外あり)
原則として昼間学生は雇用保険に加入できません。
しかし以下の条件を満たした場合、雇用保険の加入対象となります。
- 卒業見込証明書を有し、卒業前に就職し、卒業後も同一の事業主に勤務することが予定される者であること(内定者による卒業前勤務)
- 休学中の者(事実を証明する文書が必要)
- 事業主の命令または事業主の承認を受け(雇用関係を存続したまま)大学院などに在学する者
- 一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業において、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる者(事実を証明する文書が必要)
また、通信教育、夜間、定時制の学生も雇用保険加入の対象者に含まれます。
雇用保険加入条件の注意点
雇用保険の加入条件には、対象者や雇用形態によっていくつか違いがあります。代表的な注意点について解説します。
(1)高齢者や短期雇用の場合
被保険者が高齢である場合や、短期雇用の場合には一般被保険者と適用される類型が異なります。
高年齢被保険者
65歳以上の高齢労働者に適用されます。継続雇用の有無にかかわらず、加入条件が満たされていれば、新規雇用保険も可能です。
短期雇用特例被保険者
期間を限定して雇用され、雇用契約が4カ月を超え1年未満かつ週所定労働時間が30時間以上の労働者に適用されます。
日雇労働被保険者
日雇いで雇用される、または30日以内の期間を定めて雇用される労働者に適用されます。 これらの条件に該当せず、継続して31日以上同じ事業所で勤務しているなどの実態がある場合には、一般の被保険者となります。
(2)雇用形態が途中で変わる場合
働いている途中で契約内容が変更となった場合、雇用保険の加入対象者から外れることがあります。 たとえば、同じ職場で勤務しながら契約を変更し、週20時間未満の勤務になった場合、その時点で雇用保険の対象から外れます。
(3)雇用保険の加入対象から外れた場合
雇用保険の加入対象者から外れた労働者が、そのまま継続して勤務する場合は、加入条件を外れた前日に離職したものとみなし、被保険者資格喪失手続きができます。 手続きをすると離職票が発行され、給付金の額や受給日数が決まります。
雇用保険の加入手続き方法
雇用保険に加入する場合の手続き方法、必要書類について解説します。
(1)必要な書類
雇用保険の加入手続きのためには、以下の書類が必要です。
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署に提出した控え)
- 保険関係成立届
- 法人登記謄本(原本)または登記事項証明書
- 労働者名簿など(労働者の雇用実態把握のため)
※法人の場合に限る。個人事業の場合は登記簿謄本が存在せず、他の書類が必要。
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険の適用事業所を新たに設置した際は、雇用保険適用事業所設置届を提出する必要があります。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の被保険者になる人を雇い入れるたびに提出しなければなりません。
提出期限は、雇い入れた日または雇用保険の加入要件を満たした日の翌月10日までです。
労働保険関係成立届の控え
労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署に提出した控え)は、事業開始日または適用事業に該当した日の翌日から起算して10日以内に、管轄労働基準監督署へ提出しましょう。
その際には、法人登記簿謄本(原本)または登記事項証明書(個人事業の場合には住民票)を添付する必要があります。添付できる法人登記謄本(原本)または登記事項証明書は、交付後3ヶ月以内のものに限ります。
マイナンバーの記入について
2018年5月より、雇用保険の手続き書類に個人番号(マイナンバー)の記入が必要になりました。事前に従業員に利用用途を知らせた上で、マイナンバーを知らせてもらいましょう。
事業者は、届出を提出するにあたり「従業員のマイナンバーをハローワークに届出済みであるか」を確認します。 マイナンバーの届出をおこなっていない場合は、届出書類に「個人番号登録・変更届」を添付のうえ、原則として事業主を経由して提出しなければなりません。
(2)手続きの流れ
事業設置時から従業員の雇用保険加入手続きまでの流れは、以下のとおりです。
- 保険関係成立届を労働基準監督署に提出
- 保険関係成立届の控えと雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出
- 雇い入れた従業員の雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出
事業所で新たに従業員を雇い入れることになった場合は、その都度「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ提出します。
※雇用関係が成立した月の翌月10日まで 「雇用保険適用事業所設置届事業主控」と「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」が交付されたら、雇用保険被保険者証を従業員本人に渡します。
当該従業員が別の会社で働いていた経験がある場合には、そこで発行された雇用保険被保険者証の番号を提示してもらいましょう。
雇用保険加入義務を怠った場合の罰則
事業者が被保険者資格を有する労働者を雇用保険に加入させる義務を怠ったときは、懲役6ヶ月以下もしくは罰金30万円が科せられるとの規定があります(雇用保険法83条1号)。
加入させる義務を怠った事実について労働局等に申告がなされ、これに基づく調査で義務違反の事実が認められると、労働局より指導・勧告が繰り返し行われます。
それでも違反を是正しない場合、罰則規定が適用される可能性があります。
まとめ
事業者には、雇用保険加入のために必要な手続きをする義務があります。雇用保険についての知識を身につけ、登録に漏れがないようにしましょう。
しかしながら、雇用保険加入手続きには煩雑な部分があります。服部社会保険労務士事務所では、上記のような手続きをサポートするサービスをご用意しています。
人事労務担当者にかかる負担の軽減のため、ご利用されるのはいかがでしょうか。