雇用調整助成金とは?特例措置が2022年9月まで延長
投稿日:2022年8月3日
経営環境が悪化し、事業を縮小せざるを得ない企業が、従業員の雇用を維持しようと努めた際に支援を受けられるものです。
今回は、雇用調整助成金について、基礎知識や申請方法、特例措置の延長について解説します。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、売上減少などの経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、従業員の雇用維持に向けて雇用調整(休業など)に取り組む場合に、支援を受けられる助成金制度です。
雇用調整助成金の特例措置
新型コロナウイルス感染症への対応として「雇用調整助成金の特例措置」が設けられました。
特例措置により助成率および上限額の引き上げがおこなわれ、従業員を対象に教育訓練を実施した場合はさらに助成額が加算されます。
この取り組みは2020年4月より開始され、現段階では2022年9月30日までの延長が発表されています。
今後の社会情勢によってさらなる変更が出る可能性もあります。最新情報は厚生労働省のHPをご覧ください。
【参考】厚生労働省 「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」(外部サイト)
雇用調整助成金の支給条件
雇用調整助成金の支給対象となるのは、雇用保険が適用されている事業所の事業主です。
以下の要件を満たすことで、支給を受けることができます。
- 売上高または生産量などの事業活動を示す指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少している
- 雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していない
- 実施する休業や出向が労使協定に基づいている
- 過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了日の翌日から起算して1年を超えている
不正受給への対応の厳格化
虚偽の申請による不正受給が判明した際には、不正が発覚した最初の判定基礎期間以降に支給された助成金を返還しなくてはなりません。
特例措置による申請の簡略化などを受けて、不正受給の問題が深刻になっています。
防止対策として、悪質なケースであると認められる場合には、厚生労働省HP上で事業所の名称、代表者氏名、所在地などが公表されることになりました。
さらに重大かつ悪質である場合には、捜査機関に刑事告訴される可能性もあります。
【参考】厚生労働省 「雇用調整助成金不正受給の対応を厳格化しています」(外部サイト)
雇用調整の具体的な措置
事業活動の縮小などで従業員の雇用維持を図る際、企業は以下のような雇用調整措置を講じなくてはなりません。
休業
生産量の変動に対応する場合や、比較的短期間での回復が予想できる場合に、休業を実施するケースが見られます。
この場合の休業とは、従業員が仕事をする意思と能力があるにもかかわらず、業務にあたることができない状態を指します。ストライキなど仕事をおこなう意思がない場合、疾病休暇のように労働能力を失っている場合などは支給対象になりません。
教育訓練
支給対象となる教育訓練は、原則として、仕事への知識や技術の向上を目的とすることが条件です。
従業員がその時点でおこなっている業務に限定せず、その職業に結び付くような技術や知識の向上に役立つものも含まれます。そのほか、企業活動の縮小による部署や配置転換に必要な訓練も該当します。
ただし、企業が定めている就業規則によっておこなわれる教育訓練や、従業員の転職や再就職を目的としたものは支給対象になりません。
出向
出向は、その企業の従業員という立場を維持しながら、他の雇用主の事業所で業務をおこなうことです。
将来出向元企業に戻るという前提で一度退職し、出向先企業で業務をおこなうケースも含まれます。
資本的な結び付きから、その独立性が認定されない企業間の出向は人事異動と変わらないため、雇用調整助成金の支給対象にはなりません。
雇用調整助成金の申請手続き
まず、労使協定の締結と雇用調整(休業など)を実施し、事後的に雇用調整助成金の申請手続きをおこないます。
受給するまでの流れは以下のとおりです。
- 1.労使協定の締結
- 2.休業などの実施
- 3.支給申請
- 4.労働局の審査
- 5.支給決定後に振込み
申請は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局やハローワーク、または下記のオンライン受付システムでおこなうことができます。
手続きから通常3週間ほどで振込みが実行されます。
【参考】厚生労働省 「雇用調整助成金等オンライン受付システム」(外部サイト)
まとめ
新型コロナウイルス感染症は、現在も経済に大きな影響を及ぼし続けています。
企業にとって厳しい時代を乗り越えるため、事業主には利用できる制度についての情報収集と適切な活用が求められるでしょう。
服部社会保険労務士事務所では、上記のような手続きをサポートするサービスをご用意しています。
社会保険・労働保険についてのご相談は、当事務所のお問い合わせフォームまたはLINEよりご連絡ください。